前回は、
「思い出の単語を10個書いてみよう」
というところから始めました。
いきなり文章を書こうとしなくていい。
まずは、自分の記憶の入り口になる言葉を並べてみる。
これは、自分史を気軽に始めるための第一歩です。
でも次にこう思う人も多いはずです。
「単語は出た。でも、ここからどう広げればいいの?」
今回は、その次の段階です。
思い出の単語をひとつ選んで、
5つの問いで記憶を広げる方法
をやってみましょう。
難しいことはありません。
むしろ、思い出はこのくらいシンプルに掘った方が出てきます。
単語をひとつ選ぶだけでいい

前回、思い出の単語を10個書いた人は、
その中からひとつ選んでみてください。
たとえば、
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 公園
- 商店街
- 友達の家
- 部活動
- 初めてのアルバイト
こんな単語が出ていたとします。
この中で今回は、たとえば
「学校」
を選んでみましょう。
別に一番大きな思い出でなくていいんです。
なぜか少し気になる。
なんとなく書けそう。
その場所に行くと何か思い出しそう。
そのくらいで十分です。
自分史は、立派な出来事から始める必要はありません。
思い出を広げる5つの問い

ひとつの単語を選んだら、次はその言葉に対して問いを投げます。
今回使うのは、次の5つです。
- どこで?
- 誰と?
- どんなことがあった?
- 印象・感覚は?
- 今はどんな気持ち?
たったこれだけです。
でも、この5つで記憶はかなり広がります。
1. どこで?
まずは場所です。
たとえば「学校」といっても、
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 高校
- 通学路
- 校門
- 校庭
- 教室
- 体育館
- 部室
いろいろあります。
ここで大事なのは、
ぼんやりした“学校”を、少し具体的な場所に変えること
です。
たとえば、
大庄小学校の西門
校庭のすみ
通学路の角
校舎の裏
運動場の鉄棒の近く
こうやって場所が具体的になると、記憶が急に動き始めます。
「そういえば西門の前に何があったかな」
「校門の前で誰と待ち合わせしていたかな」
こんなふうに、次の記憶につながります。
2. 誰と?
次に、人です。
思い出は、場所だけでは動きません。
誰と関わっていたか
が出てくると、一気に立体的になります。
- 同級生
- 仲の良かった友達
- 近所の子
- 先生
- 先輩
- 兄弟
- 親
- 同級生のお母さん
僕自身も昔の場所を思い出していると、建物そのものより先に
「あ、あの友達の顔が浮かんだ」
ということがよくあります。
人が出てくると、その人との会話、表情、出来事まで引っぱり出されてきます。
西門の前には、同級生のお母さんがやっていた美容室があった
放課後は友達と校門のところで立ち話をした
先生に怒られたことを思い出した
こんなふうに、人が入るだけで記憶は濃くなります。
3. どんなことがあった?
ここで、出来事を思い出します。
といっても、大事件はいりません。
自分史というと、
「人生を変えたような出来事を書かないといけない」
と考えてしまいがちですが、そんな必要はありません。
むしろ大事なのは、
その人にしかない小さな日常
です。
- 朝、校門をくぐった
- 友達とふざけながら歩いた
- 校庭で遊んだ
- 部活で走った
- 授業をさぼりたかった
- 夏休みの運動場がまぶしかった
- 帰り道に寄り道した
- 先生に呼び止められた
こんなことでいいんです。
大庄小学校の近くを歩くと、昔の通学路の感覚が戻ってきた
西門前の景色は変わっていた
でも、そこにいた同級生や当時の空気を思い出した
このくらいでも十分に記事の材料になります。
4. 印象・感覚は?
ここがとても大事です。
出来事だけを書くと、説明になりやすい。
でも、その時にどう感じていたかを入れると、その人らしさが出ます。
- まぶしかった
- 暑かった
- こわかった
- にぎやかだった
- 静かだった
- 楽しかった
- ちょっと緊張していた
- 匂いまで覚えている
- 風が気持ちよかった
- 土の感じが懐かしい
感覚の記憶は、文章をぐっと生きたものにしてくれます。
夏の校庭はとにかくまぶしかった
運動場の土のにおいを思い出す
西日が差す帰り道が妙に印象に残っている
校門の前は、なんとなく大人の世界に近い感じがしていた
こういう感覚は、その人にしか書けません。
AIは文章を整えることはできます。
でも、その時の肌感覚は本人にしか出せません。
ここが自分史の面白いところです。
5. 今はどんな気持ち?
最後に、今の気持ちです。
これが入ると、ただの昔話では終わりません。
- 懐かしい
- 驚いた
- 寂しい
- 変わってしまったなと思う
- でも面影は残っている
- もう一度歩けてよかった
- 今だから気づけた
- 当時の自分に会えた気がした
こうした「今の気持ち」は、現在の自分と過去の自分をつなげてくれます。
僕も昔の場所へ行くと、
「なくなってしまったんだな」
「ずいぶん変わったな」
「でも、自分の中にはちゃんと残っていたんだな」
そんなことをよく感じます。
この“今の気持ち”があるから、自分史は単なる記録ではなく、
今を生きる自分の文章
になります。
5つの問いでメモを作ってみる

では実際に、「学校」をテーマにメモにするとこんな感じです。
学校
どこで:大庄小学校の西門のあたり
誰と:同級生、友達、同級生のお母さん
どんなことがあった:学校の行き帰りに通った。西門前の景色をよく覚えている。近くにあった店や人のことも思い出した
印象・感覚は:通学路の空気、校門まわりの雰囲気、子どもの頃の少し緊張した感じを思い出す
今はどんな気持ち:景色は変わったけれど、記憶はちゃんと残っていた。歩いてみてよかった
これで十分です。
文章として完成していなくても問題ありません。
むしろ、このくらいのメモの方がAIには渡しやすいです。
AIにはこう頼めばいい

このメモができたら、AIに渡します。
たとえば、こんなふうに頼めます。
以下の思い出メモをもとに、60代の男性が昔を振り返るブログ記事の下書きを作ってください。
読者が自分の記憶も思い出したくなるような語り口で、懐かしさと今感じていることが伝わる文章にしてください。テーマ:学校
どこで:大庄小学校の西門のあたり
誰と:同級生、友達、同級生のお母さん
どんなことがあった:学校の行き帰りに通った。西門前の景色をよく覚えている。近くにあった店や人のことも思い出した
印象・感覚は:通学路の空気、校門まわりの雰囲気、子どもの頃の少し緊張した感じを思い出す
今はどんな気持ち:景色は変わったけれど、記憶はちゃんと残っていた。歩いてみてよかった
するとAIは、バラバラの記憶をひとつの記事にまとめてくれます。
ここでも大事なのは、前回と同じです。
AIに思い出を作らせない。
思い出すのは自分。
AIはそれを整理して、文章にしやすくしてくれる補助役です。
曖昧な記憶でも大丈夫
「でも、そんなにはっきり覚えていない」
という人もいると思います。
それでいいんです。
自分史は、記憶の正確さを競うものではありません。
- なんとなく覚えている
- ぼんやりした感覚だけ残っている
- たぶんこうだったと思う
こういう記憶から始まることも多いです。
現地に行ってみる。
写真を見る。
地図を見る。
昔の友達の顔を思い出してみる。
そうすると、少しずつ記憶がつながっていきます。
僕も、タートル号で昔の町を走ってみて、現場に立ったからこそ思い出せたことがたくさんあります。
頭の中だけでは出てこなかった記憶が、現地の空気で戻ってくるんです。
写真は今の写真で十分
昔の写真がなくても大丈夫です。
これは本当に大事なことです。
「昔の写真が残っていないから書けない」
と思ってしまう人は多いのですが、そんなことはありません。
今の校門。
今の公園。
今の通学路。
今の町並み。
その写真に、昔の記憶を重ねれば、それだけで立派な記事になります。
- 今はボクシングジムになっている
- でも昔は美容室だった
- 今は住宅地になっている
- でも昔は市役所の支所があった
こういう「今」と「昔」の重なりが、自分史の記事では大きな魅力になります。
5つの問いは学校以外にも使える
この方法は、「学校」だけではありません。
公園
- どこで?
- 誰と?
- どんな遊びをした?
- どんな空気だった?
- 今はどう感じる?
商店街
- どの店によく行った?
- 誰と行った?
- 何を買った?
- どんなにぎわいだった?
- 今の商店街を見てどう思う?
初めてのアルバイト
- どこで働いた?
- 誰と一緒だった?
- 何が大変だった?
- どんな匂いや音を覚えている?
- 今思い返すとどう感じる?
どんなテーマでも、
5つの問いでかなり書けるようになります。
1本の記事は「全部」でなくていい
自分史を書く時に、つい
「もっと大きな話を書かないといけない」
「ちゃんとまとまった人生の流れにしないといけない」
と思いがちです。
でも、そうすると書けなくなります。
今回は学校。
次回は公園。
その次は友達の家。
また別の日には初めてのアルバイト。
そんなふうに、一つずつでいいんです。
1本ずつ積み上げれば、あとから振り返った時に、それが立派な自分史になります。
まずはひとつ選んで、5つ答えてみよう
では、今回のまとめです。
前回、思い出の単語を10個書いた人は、その中からひとつ選んでください。
そして、その言葉について次の5つに答えてみます。
- どこで?
- 誰と?
- どんなことがあった?
- 印象・感覚は?
- 今はどんな気持ち?
これだけで、AIに渡せるメモになります。
最初からうまく書く必要はありません。
断片でいい。
箇条書きでいい。
少し曖昧でもいい。
大切なのは、
自分の中にある記憶の糸を、少しずつ手繰り寄せること
です。
思い出は、問いかけると返ってくる
人の記憶というのは不思議なもので、
何も聞かれなければ出てこないのに、
いい問いを投げると急に動き出します。
「どこだった?」
「誰といた?」
「何があった?」
「どんな感じだった?」
「今はどう思う?」
この問いかけは、そのまま自分自身との会話です。
そして、その会話をAIが整理してくれれば、
自分史はぐっと身近なものになります。
前回は、単語を10個書くところから始めました。
今回は、その中からひとつを選び、5つの問いで広げました。
次は、
そのメモをもとに実際に文章へしていく段階
に進めます。
まずは今日、気になる単語をひとつ選んで、5つの問いに答えてみませんか?